使い勝手のよいユーザーインターフェースとマップ表示の多彩さを両立したマップ連動の農地管理システム
マッピングシステム導入事例インタビュー
上伊那農業協同組合
平澤 厚様
中村 嶺子様
お客様の課題とご要望
- 熟練のオペレーション担当者でなくても対応できる使いやすさ。
- 住所表記変更などのイレギュラーな操作にも対応できる。
- 実際の住所とデータの正確なマッチング。
- 区画ごとの色分けのバリエーションがほしい。
- ランニングコストの軽減。
導入効果
- システム運用コストの大幅減少。
- 入力オペレーションおよび出力業務の円滑化と安定化。
- マップ表現のバリエーションが豊富なので業務が格段にやりやすくなった。
- 開発当初想定していなかった事態にも仕様拡張で柔軟に対応できた。
01. 導入の背景と課題
年々重要度が増す一方の「農地の運用管理」にどう対処するのか。

とあるIT研究会に出席した当JAの営農経済部長が、NTTデータ信越さんの構築したJAいわて花巻の農地管理システムに興味を持ちました。農地情報と地図を連動させるきわめて有用なシステムでありながら、データ入力管理はMicrosoft Excel®を使うというシンプルさにひかれたのです。その後1年半の検討期間と5カ月の開発期間を経て、この農地情報マッピングシステムは、当JA管内の伊那市内の各支所と南箕輪村内の支所で導入され、今も順調に活用されています。農業従事者の後継者不足、農地・農村の荒廃に歯止めをかけるべく各地域で農地活用に関わるさまざまな対策、取り組みが行われています。その中でJAの果たすべき役割は極めて重要で、地域の農地を総合的に管理するシステムをどのようなものにするかの判断は当然慎重にならざるをえません。近年、JAが主導して地域の農地の集約化と効率化を推進するようになると、農地管理システムがカバーしなければならない業務の範囲は広がる一方、そしてその重要度も増す一方なのです。
システムの機能と同様に「使い勝手」が課題だった
私たちの望みは、誰でも操作ができて、かつ出力形態のバリエーションが確保されたシステムでした。当時稼働していたシステムは、さまざまな機能は実装されていたものの、専門のオペレータが常駐していない各支所では使いきることができない「宝の持ち腐れ」状態でした。インフラ面・ソフト面ともに大がかりだったので多額の運用コストも必要でした。
それに加え、2006(平成18)年に施行された伊那市の住所表記変更によって、農地データと住所データに大量のズレが発生してしまいましたが、細かなデータ修正に対応しづらいシステムだったので、どうやってもマッチングし直すことができませんでした。こういった状況の中で、シンプルで使い勝手のよい新しいシステムの導入が望まれるようになったのです。
02. 選定ポイントと導入の流れ
使えなければ意味がない−ユーザーインターフェースにMicrosoft Excel®を使う発想。

必要な業務をしっかり絞り込み、その業務についての使い勝手を追求する事がシステム選定の一番のポイントでした。各支所においてデータを入力・変更する職員は必ずしもITに習熟しているとは限りません。そこで「誰でも使える」Microsoft Excel®をインターフェースとした当マッピングシステムのシンプルさはとても魅力的なものでした。これなら農地管理システムが格段に使いやすくなり、業務の効率化・平準化に向かうのではないかと期待されたのです。
また、ネットワークでのシステム運用をやめ、各支所のPCで独立して稼働させるようにしました。年2回ある全データの更新時には、システム担当者が全支所を周ってデータ差し替えの作業をする必要がありますが、おおむね2日あれば完了できます。これにより高額だった専用線ネットワーク費用が劇的に削減されたばかりではなく、セキュリティ面でも有利になり、シンプルで小回りの利くシステムが実現されました。
現場のヒアリングをもとに、アウトプットのバリエーションを確保
システム構築に先立って真っ先に取り組んだのが、このシステムを使う現場の実態をNTTデータ信越さんと一緒に正確に把握する事でした。当JA管内の8市町村のそれぞれの支所に散らばった9拠点を全て周って詳細にヒアリングしてみると、マップの使い方にそれぞれ違いがあることも分かり、それをどのように標準化するべきかという観点からシステム構築作業が始まりました。
この現場ヒアリングを徹底したからこそ、当初の目的であった「使い勝手の向上」が実現できたのです。また、ヒアリング活動はシステムを使う現場の信頼を得るという副産物も生み出しました。
03. 導入効果と今後の展望
スムーズな帳票出力と視覚に訴えるマップ表現が、業務を効率化。

耕起、播種、刈り取りといった農家の繁忙期になると、管内の農地所有者から続々と農作業委託申込書が集まってきます。その膨大なデータを各拠点の担当者がMicrosoft Excel®上で追加していきます。それを基に、拠点によっては1,500枚を超えるほどの作業依頼書が出力されるわけですが、当マッピングシステム導入後は作業全体がスムーズになり、ミスも少なくなり、全体として大きな効率化につながりました。
また、耕作地の集約化・効率化を実現するためにも、当マッピングシステムは欠かせないツールとなっています。地図上の一つひとつの農地ごと(一筆ごと)にデータを表示させたり、耕作者別・作物別などの属性ごとに色分けできたりと、視覚に訴える表現のバリエーションの幅は広く、またその操作もPC上で簡単にできるので、さまざまなシミュレーションに使われるようになっています。
マッピングシステムが内包する拡張性・汎用性が今後に活きてきます。
現在は伊那市と南箕輪村管内で活用されている本システムが、より広域で稼働するようになれば効果はさらに向上すると考えられます。市町村ごとに異なる農地管理に対する考え方、個人情報に対する考え方を、すべて包括できるようなシステムアップが課題と思われます。
また、本システムの汎用性を最大限に引き出し、毎年のように変わる農業政策に常に対応できるような順応性も今まで以上に求められるでしょう。
COMPANY PROFILE
上伊那農業協同組合
【本所】
長野県伊那市狐島4291
【農畜産物販売額】
143億7,000万円
【出資金】
83億3,828万円
【正准組合員数】
約28,700人
【職員数】
約1,000人